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2015年03月18日
第三十二回 全国的にも珍しい「円形の徳」
(写真1:田中城跡)
藤枝市には、田中城という城がかつて存在した。
この城は「円形の徳」が実践的に応用された全国的でも珍しい例である。
今回は、この田中城跡と周辺について紹介したい。
まず、「円形の徳」とは何か。
簡単に説明すると城(というか城を守る堀)は丸ければ丸いほど敵の攻撃を受けにくく、攻撃するときは有利という意味であり、江戸時代の軍学者も城づくりの基本としていた考え方である。
次に田中城の歴史等についてだが、藤枝市郷土博物館・文学館のホームページで大変分かりやすい「田中城跡散策ガイド(表・裏)」がダウンロードできる。ぜひ、そちらを読んで頂きたい。
(→ダウンロードはこちらから)
(写真2:城跡周辺の説明書き)
(写真3:田中城復元図の上に現在の図面を合わせたもの)
城跡を散策する醍醐味は、跡地に訪れ自分自身の持つ豊かな想像力によって、今はなき城や堀を脳内再現することにある。とはいえ、情報が限られれば豊かな想像力にも限界はある。
そんな声に応えてくれたのだろうか、親切にも田中城に関する情報を藤枝市が跡地周辺にいくつも掲示している。例えば、田中城復元図の上に現在の図面を合わせた図が掲示されているが、これは分かりやすい。
(写真4:史跡田中城下屋敷)
また、田中城にゆかりの「田中城本丸櫓」「茶室」「仲間部屋・厩(うまや)」「長楽寺村郷蔵」等を移築・復元した史跡田中城下屋敷もあるため、散策していて飽きることはない。
ぜひ多くの方に田中城跡を楽しんでもらいたいし、私も先日十分に楽しんだ。
(写真5:田中城二之堀跡)
冒頭に書いた円形の徳については、散策すると体感することができる。田中城二之堀跡は特にはっきり確認できる場所だろう。
ただ、やはり空中から全体を眺めなければ円形の徳を確認することは難しい。
そこでご紹介したいのが、国土地理院ホームページ (http://mapps.gsi.go.jp/)。
ここでは、空中写真を閲覧することができる。
それならGoogle Mapがあると指摘する方もいるかもしれないが、国土地理院のすごいところは過去の写真も閲覧できる点にある。つまり、田中城周辺の町並みの変化を知ることができる。
せっかくなので、田中城跡付近の航空写真を時系列に並べてみる。
田中城が円形の徳を実践的に応用した城であることが、写真から一目で分かる。

1946年3月26日(昭和21年)
出典:国土地理院ホームページ

1962年7月31日(昭和37年)
出典:国土地理院ホームページ

1976年2月2日(昭和51年)
出典:国土地理院ホームページ

2009年4月29日(平成21年)
出典:国土地理院ホームページ
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時代と共に町並みは変化したが、田中城の痕跡は今もはっきりと空から確認できるという点について、私は素直に素晴らしいと思っている。
田中城の存在を知っていたが足を運んでいなかった方、今回はじめてその存在を知った方、ぜひ実際に足を運んで頂きたいと思います。
城跡としてはかなりきちんと整備されているため、県外の方で古城に関心のある方にも満足して頂けるのではないでしょうか。
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執筆/伊藤貴広
Posted by 日刊いーしず at 12:00
2015年03月04日
第三十一回 金谷から千頭までをドライブ
ぽかぽか陽気の日に、孫を連れて久しぶりにドライブに出かけました。
桜の季節でも紅葉の季節でもないので、幸い道路は空いていました。
前から行きたいと思っていた大井川鉄道の駅舎を見に行ってきました。
どの駅舎も古く、修繕を繰り返してなんとか崩れずに立っているようでした。

最初に桜トンネルで有名な家山駅に着きました。

ホームは風情があってよかったのですが、駅舎は継ぎ接ぎのトタン屋根、
付属している立ち食いカウンターのようなところは、景観も何も考えて無いようでした。
よく撮影で利用されると聞いていたので、
少し期待して行ったのもあり、ちょっと切なくなりました。
次の抜里駅は、どれが駅舎なのかと迷ってしまいました。
以前駅舎だったであろう建物には‘サヨばあちゃんの休憩所’と書いてありました。
駅舎手前の今にも倒れそうな自転車置き場には、10台くらいの自転車が止めてありました。
線路と駅舎の間には花壇があり、サヨばあちゃんが植えたのか、
暖かくなったら咲きそうな花芽が出ていました。
花が咲くころ電車の窓から見たら、ちょっと幸せを感じるでしょう。
写真を撮って帰ろうとしていると、野良仕事から帰ったおばあちゃんに会いました。
「静かでいい所ですね」と話しかけると、「何にも良くないよ」と
ちょっと寂しそうに答えが返ってきました。
どうしてかと尋ねると、「若い者はどんどん街に出て行って、
住んでいるのは年寄りばかりなんだよ」とのこと。
ここでは過疎化が進んでいるのだと感じました。

自転車置場と駅舎

花壇
次に下泉駅につきました。国道473号沿いで、すぐに見つかりました。


利用客が多いからか、はたまたここから川根町に入るからか、
ここは外部も内部も比較的良い状態で使われていました。
ただ道路沿いのポストの色が朱赤でないのが気になりました。
次は徳山駅。


この駅も割と良い状態ではないかと思います。
このまま建築時の雰囲気を残していってほしいと思います。
修繕のやり方によってはまだまだ良くなります。

最後は千頭駅。


ここは大井川鉄道の終点駅で建物は現代的になっています。
SLが走る大井川鉄道の駅のイメージとは少し離れているな、
と感じる人は少なくないと思っています。
できれば木造建築の駅舎であってほしいと思いました。
《最後に》
景観と建物とは関係が深く、ヨーロッパなどはそれぞれのやり方で規制し、
大切に考えられています。
その土地土地に似合った景色というものは全国どこにでもあると思います。


しかしながら最近ではどこに行っても違いがあまりなくなって、
昔ながらの景色が見つからなくなりました。
駅前開発で駅周辺に高層マンションが建ち、景観はどの駅も似たり寄ったりです。
家山駅などはこれからの桜の時期、観光客が多くなることと思います。
うまく修繕をすれば趣きのある駅舎に蘇るのに、
地元の方は日常目にする場所だからか、改めて考えることがないのは残念です。
街並みが何度でも訪れたくなるような景観になっていくことを願っています。
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執筆/タテイシ建築設計 立石昌江
桜の季節でも紅葉の季節でもないので、幸い道路は空いていました。
前から行きたいと思っていた大井川鉄道の駅舎を見に行ってきました。
どの駅舎も古く、修繕を繰り返してなんとか崩れずに立っているようでした。
最初に桜トンネルで有名な家山駅に着きました。
ホームは風情があってよかったのですが、駅舎は継ぎ接ぎのトタン屋根、
付属している立ち食いカウンターのようなところは、景観も何も考えて無いようでした。
よく撮影で利用されると聞いていたので、
少し期待して行ったのもあり、ちょっと切なくなりました。
次の抜里駅は、どれが駅舎なのかと迷ってしまいました。
以前駅舎だったであろう建物には‘サヨばあちゃんの休憩所’と書いてありました。
駅舎手前の今にも倒れそうな自転車置き場には、10台くらいの自転車が止めてありました。
線路と駅舎の間には花壇があり、サヨばあちゃんが植えたのか、
暖かくなったら咲きそうな花芽が出ていました。
花が咲くころ電車の窓から見たら、ちょっと幸せを感じるでしょう。
写真を撮って帰ろうとしていると、野良仕事から帰ったおばあちゃんに会いました。
「静かでいい所ですね」と話しかけると、「何にも良くないよ」と
ちょっと寂しそうに答えが返ってきました。
どうしてかと尋ねると、「若い者はどんどん街に出て行って、
住んでいるのは年寄りばかりなんだよ」とのこと。
ここでは過疎化が進んでいるのだと感じました。
自転車置場と駅舎
花壇
次に下泉駅につきました。国道473号沿いで、すぐに見つかりました。
利用客が多いからか、はたまたここから川根町に入るからか、
ここは外部も内部も比較的良い状態で使われていました。
ただ道路沿いのポストの色が朱赤でないのが気になりました。
次は徳山駅。
この駅も割と良い状態ではないかと思います。
このまま建築時の雰囲気を残していってほしいと思います。
修繕のやり方によってはまだまだ良くなります。
最後は千頭駅。
ここは大井川鉄道の終点駅で建物は現代的になっています。
SLが走る大井川鉄道の駅のイメージとは少し離れているな、
と感じる人は少なくないと思っています。
できれば木造建築の駅舎であってほしいと思いました。
《最後に》
景観と建物とは関係が深く、ヨーロッパなどはそれぞれのやり方で規制し、
大切に考えられています。
その土地土地に似合った景色というものは全国どこにでもあると思います。
しかしながら最近ではどこに行っても違いがあまりなくなって、
昔ながらの景色が見つからなくなりました。
駅前開発で駅周辺に高層マンションが建ち、景観はどの駅も似たり寄ったりです。
家山駅などはこれからの桜の時期、観光客が多くなることと思います。
うまく修繕をすれば趣きのある駅舎に蘇るのに、
地元の方は日常目にする場所だからか、改めて考えることがないのは残念です。
街並みが何度でも訪れたくなるような景観になっていくことを願っています。
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執筆/タテイシ建築設計 立石昌江
Posted by 日刊いーしず at 12:00