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2015年05月06日
第三十五回 静岡を見渡す清水忠霊塔公園
静岡市立清水病院の前の道、県道198号を海に向かってすすむと右手に駒越の小さな交番が見えます。交番の横は広めのグラウンドになっていて、こどもがサッカーなどを楽しむ日常的な光景が見られます。
今回ご紹介するのは、そのグラウンドの後ろにある小高い山(迎山)と一体につくられた清水市忠霊塔です。清水に在住の方でも知らない人もいるのでは…と思うほどひっそりと、山の緑に隠れるように建っています。

山の緑に覆われひっそりと建つ
清水市忠霊塔は56年前(1959年)、大東亜戦争の戦没者と戦災殉職者の霊を慰めるために清水市により建設されました。設計者は建築家、吉田五十八氏。彼の65歳のときの作品です。
吉田五十八氏は近代数奇屋建築の祖とされ、1964年に文化勲章を受章しています。代表作は東山旧岸邸(見学可)、岩波茂雄別邸、吉屋信子邸、成田山新勝寺大本堂、元歌舞伎座(第四期)など多々あります。

吉田五十八邸 住宅建築別冊17より

成田山新勝寺大本堂 大林組HPより
そんなすごい建築家が、なぜ清水の忠霊塔の設計を…?と思ってしまいますが、1942年(昭和17年)静岡市紺屋町にある名園「浮月楼」の建物も吉田五十八氏が設計しています。もしかしたら「浮月楼」の絶世の美女で知られた芸者・八重千代(旧姓 北原初枝)が、五十八氏の妻であったことが関係しているのかもしれません。残念ながら浮月楼は、戦災で焼失して現在の建物に建て直されています。

浮月楼 浮月楼HPより
忠霊塔をグラウンドに立って見上げると、正面に階段(92段)がそそり立ち、上にいくほど絞り込んだ、階段の両ささら桁が柱となり天空を指しています。反対側の丘からも2本の柱が立ち4本の柱が交差して、山と一体となったスケールの大きいモニュメントとなっています。
当時の市政だよりによると「神社の千木(ちぎ)を表現したデザイン」とあります。五十八氏は、戦没者を慰めるため、迎山という立地環境と日本文化を融合させてこの塔を考えついたのかもしれません。
山の頂上に立つと、富士山、清水港、三保の松原、晴れた日には伊豆連山が一望できます。まだ樹木が覆い繁っていなかった当時の忠霊塔は、きっと素晴しく、清水の人たちも感嘆の声をあげていたことと思います。

階段の両ささら桁が天空を指す

神社の千木を表現
清水忠霊塔公園への行き方
住所 :静岡県静岡市清水区迎山町2081-1
交通 :JR清水駅より しずてつジャストライン「忠霊塔前」下車 徒歩2分
※忠霊塔は現在、耐震・安全性に問題があります。これからもまちのシンボルとして永く存続させるためには、構造専門家と地域の方々の協力が、いまも求められています。
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執筆/鍋田さつき
今回ご紹介するのは、そのグラウンドの後ろにある小高い山(迎山)と一体につくられた清水市忠霊塔です。清水に在住の方でも知らない人もいるのでは…と思うほどひっそりと、山の緑に隠れるように建っています。

山の緑に覆われひっそりと建つ
清水市忠霊塔は56年前(1959年)、大東亜戦争の戦没者と戦災殉職者の霊を慰めるために清水市により建設されました。設計者は建築家、吉田五十八氏。彼の65歳のときの作品です。
吉田五十八氏は近代数奇屋建築の祖とされ、1964年に文化勲章を受章しています。代表作は東山旧岸邸(見学可)、岩波茂雄別邸、吉屋信子邸、成田山新勝寺大本堂、元歌舞伎座(第四期)など多々あります。

吉田五十八邸 住宅建築別冊17より

成田山新勝寺大本堂 大林組HPより
そんなすごい建築家が、なぜ清水の忠霊塔の設計を…?と思ってしまいますが、1942年(昭和17年)静岡市紺屋町にある名園「浮月楼」の建物も吉田五十八氏が設計しています。もしかしたら「浮月楼」の絶世の美女で知られた芸者・八重千代(旧姓 北原初枝)が、五十八氏の妻であったことが関係しているのかもしれません。残念ながら浮月楼は、戦災で焼失して現在の建物に建て直されています。

浮月楼 浮月楼HPより
忠霊塔をグラウンドに立って見上げると、正面に階段(92段)がそそり立ち、上にいくほど絞り込んだ、階段の両ささら桁が柱となり天空を指しています。反対側の丘からも2本の柱が立ち4本の柱が交差して、山と一体となったスケールの大きいモニュメントとなっています。
当時の市政だよりによると「神社の千木(ちぎ)を表現したデザイン」とあります。五十八氏は、戦没者を慰めるため、迎山という立地環境と日本文化を融合させてこの塔を考えついたのかもしれません。
山の頂上に立つと、富士山、清水港、三保の松原、晴れた日には伊豆連山が一望できます。まだ樹木が覆い繁っていなかった当時の忠霊塔は、きっと素晴しく、清水の人たちも感嘆の声をあげていたことと思います。
階段の両ささら桁が天空を指す
神社の千木を表現
清水忠霊塔公園への行き方
住所 :静岡県静岡市清水区迎山町2081-1
交通 :JR清水駅より しずてつジャストライン「忠霊塔前」下車 徒歩2分
※忠霊塔は現在、耐震・安全性に問題があります。これからもまちのシンボルとして永く存続させるためには、構造専門家と地域の方々の協力が、いまも求められています。
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執筆/鍋田さつき
Posted by 日刊いーしず at 12:00